Innovation

技術の系譜

理想の走りを追い求め、モーターサイクルの構造そのものを問い続けてきたbimota。1973年のHB1から現在に至るまで、独創的な発想と高度なエンジニアリングによって生み出された技術の歩みをたどります。

Tecnologia

半世紀の技術革新

車体の剛性、重量配分、サスペンションの作動特性、そして操舵機構。bimotaは、モーターサイクルの運動性能を左右するさまざまな要素に着目し、従来の設計思想にとらわれない技術を追求してきました。初期のレーシングマシンに採用された機構から、ハブセンターステアリング、異素材を組み合わせたフレーム、最新の空力制御技術まで。その革新の系譜を、代表的なモデルとともに紹介します。

HB1 偏心式チェーンテンショナー

1973HB1

偏心式チェーンテンショナー

bimota初のモーターサイクル、HB1に採用された偏心式チェーンテンショナー。リヤホイールの車軸位置を調整する機構に偏心カムを用いることで、チェーンの張りを迅速かつ精密に調整できる構造としました。一般的なアジャストボルトによる調整方式とは異なり、偏心機構を回転させることで車軸位置を変化させる仕組みです。チェーンの張りは駆動力の伝達やサスペンションの作動にも関わるため、正確な調整が求められます。整備性と機械的な精度を両立させようとする発想は、レーシングマシンの開発から始まったbimotaの設計思想を象徴するものです。この方式は、後のbimotaのモデルにも受け継がれています。

YB1 カンチレバーサスペンション

1974YB1

カンチレバーサスペンション

YAMAHA製エンジンを搭載するレーシングマシン、YB1に採用されたカンチレバー式リヤサスペンション。左右にショックアブソーバーを配置する従来のツインショック方式に代わり、スイングアームの動きを単一のショックユニットへ伝える構造を採用しました。この方式では、スイングアームの動きに対するショックアブソーバーの作動量を、機構の配置や寸法によって設定できます。サスペンションの作動特性を車体設計の段階から検討できる点が特徴です。路面の細かな凹凸への追従性と、大きな荷重を受けた際の支持性能。その両立を追求したYB1の設計は、後に登場するリンク式モノショックサスペンションへとつながる、bimota初期の重要な技術的試みとなりました。

SB1 同軸スイングアームピボット

1976SB1

同軸スイングアームピボット

SUZUKI製エンジンを搭載したレーシングマシン、SB1に採用された同軸スイングアームピボット。トランスミッションの出力軸とスイングアームの回転軸を一致させることで、従来の車体構造が抱えていた駆動系とサスペンションの関係に、新たな解決策を示しました。一般的な構造では、リヤサスペンションの伸縮に伴ってドライブスプロケットとリヤスプロケットの軸間距離が変化します。これに対し、両軸を同軸に配置したSB1では、スイングアームが上下しても、その距離が変化しない構造となっています。チェーンの張力変化を抑えるとともに、長いスイングアームの採用を可能にし、路面追従性と駆動時の車体挙動の改善を追求。駆動系の配置から車体構造を見直した、bimotaを代表する初期の革新的技術です。

※掲載写真はSB2

SB1 プログレッシブリンク式モノショック

1976SB1

プログレッシブリンク式モノショック

ツインショック方式が主流だった1970年代のグランプリ レーシングにおいて、bimotaはSB1にリンク式モノショックサスペンションを採用しました。単一のショックアブソーバーとリンク機構を組み合わせ、スイングアームの動きに対するショックユニットの作動比を変化させる構造です。サスペンションが沈み込む量に応じて作動特性を設定できるため、初期の滑らかな動きと、大きな荷重が加わった際の支持性能を両立させることができます。レース中に変化する路面状況や、加減速によって生じる荷重移動に対応するための技術的な選択でした。1980年代にかけて広く普及するリンク式モノショックサスペンションを、bimotaが早い段階からレーシングマシンに取り入れていたことを示す重要な事例です。

※掲載写真はSB2

SB2 前後分割フレーム

1977SB2

前後分割フレーム

マッシモ・タンブリーニが設計したSB2には、航空機の構造設計から着想を得た、前後分割式のフレームが採用されました。ステアリングヘッド側とスイングアームピボット側をそれぞれ独立した構造として設計し、エンジンを強度部材として利用することで、車体全体に必要な剛性を確保する方式です。従来のようにエンジンを鋼管フレームで全面的に囲む構造とは異なり、エンジン自体も車体を構成する要素として積極的に活用しています。SB2では、この分割式フレームに同軸スイングアームピボットやリンク式モノショックなどの先進技術を組み合わせ、車体構造を総合的に再設計しました。エンジンを強度部材として活用し、必要な部分に必要な構造を配置する。その合理的な発想は、後のTESIシリーズにも通じるbimotaの車体設計思想を示しています。

HB2 スチールとアルミのハイブリッドフレーム

1982HB2

スチールとアルミのハイブリッドフレーム

HB2に採用されたのは、鋼管フレームとアルミニウム合金製部材を組み合わせたハイブリッド構造です。マッシモ・タンブリーニは、鋼管によるトレリス構造と、アルミニウム削り出しのスイングアームピボットプレートを組み合わせ、異なる素材の特性を車体設計に活用しました。鋼管は複雑な骨格構造を形成しやすく、アルミニウム製プレートはスイングアームの支持部や各部の結合に必要な形状を精密に設計できます。それぞれの部材に役割を与えることで、フレーム全体の剛性、構造、重量を総合的に検討することが可能になります。この異素材複合構造の考え方は、後のbimotaにも受け継がれ、2025年のKB998 Riminiでは、クロムモリブデン鋼製トレリスフレームとアルミニウム削り出しプレートの組み合わせとして、現代のレース技術に結びついています。

KB3 アルミ合金の複合ホイール

1983KB3

アルミ合金の複合ホイール

KAWASAKI製エンジンを搭載したKB3には、アルミニウム合金製の部材を組み合わせた独創的なホイールが採用されました。アルミニウム製プレートを用いてホイールを構成し、リムのフランジ部分を含む独自の形状に加工。各部材を両側からリベットで結合することで、必要な強度と剛性を確保する構造です。ホイールは車体を支える部品であると同時に、回転運動を行い、サスペンションの作動にも影響を与える重要な要素です。その重量や剛性は、操縦性と路面追従性を考えるうえで無視できません。フレームだけでなく、ホイールの構造と製造方法にまで独自の解決策を求めたKB3。モーターサイクルを構成する個々の部品にも技術革新の可能性を見いだす、bimotaの開発姿勢が表れています。

DB1 フルカウル

1985DB1

フルカウル

フェデリコ・マルティーニが設計したDB1は、モーターサイクルの外装デザインに新たな方向性を示したモデルです。最大の特徴は、フロントから燃料タンク、シート周辺に至るまで、車体の大部分を一体感のある外装で覆ったフルカバード ボディワークです。従来のスポーツモーターサイクルでは、エンジンやフレームの一部が露出する構成が一般的でしたが、DB1では機械的な構造を外装の内側に収め、車体全体を連続した造形としてまとめています。外装は視覚的な個性を生み出すだけでなく、空気の流れやライダーの着座姿勢、車体各部の配置とも密接に関わります。DB1の登場は、フレーム設計を得意としてきたbimotaが、車体構造と外装を一体として捉えたことを示す転機となりました。その造形は、1980年代後半以降のスーパースポーツ デザインを語るうえで重要な存在です。

YB4 アルミ合金ツインスパーフレーム

1986YB4

アルミ合金ツインスパーフレーム

YB4は、bimotaがアルミニウム合金製フレームを本格的に採用した重要なモデルです。フェデリコ・マルティーニの設計により、航空機分野でも使用される耐食性アルミニウム合金、アンティコロダルを使用。ステアリングヘッドとスイングアームピボットを、左右の大断面部材で結ぶツインスパー構造を採用しました。従来の鋼管フレームとは異なり、アルミニウム合金の軽さと大断面構造を活かして、車体に求められる剛性を確保する設計です。高出力エンジンと高い旋回性能を両立させるため、フレームの材質と構造を根本から見直しました。YB4は1987年、ヴィルジニオ・フェラーリのライディングによってTT-F1世界選手権のタイトルを獲得。新たなフレーム技術が、世界最高峰のレースで実績を残した歴史的な一台となりました。

TESI 1D ハブセンターステアリング「TESI」

1990TESI 1D

ハブセンターステアリング「TESI」

従来のテレスコピック式フロントフォークに代わる、新たな前輪支持機構。その研究から誕生したのが、bimotaを象徴するハブセンターステアリング「TESI」です。一般的なモーターサイクルでは、フロントフォークが前輪の支持、緩衝、操舵という複数の役割を担っています。これに対しTESIでは、スイングアームによって前輪を支持し、ホイールハブ周辺の操舵機構をリンクによって操作する、独自の構造を採用しました。前輪の支持と操舵を異なる機構で担わせることで、ブレーキング時の車体姿勢やステアリング特性を、従来のフロントフォークとは異なる方法で設計できます。特に、制動時のノーズダイブを抑制する特性は、TESIの大きな特徴です。その原点は、ピエルルイジ・マルコーニが大学時代に取り組んだ研究にあります。TESIという名称も、イタリア語で卒業論文を意味する言葉に由来します。1983年の試作車公開から、油圧式操舵機構の研究、機械式リンク機構への発展など、幾度もの開発を経て、1990年のケルン モーターサイクルショーで量産モデルTESI 1Dが発表されました。従来の構造を前提とせず、モーターサイクルの運動原理そのものから理想を追求する。TESIは、その思想を最も鮮明に表す技術です。

SB6 ストレートコネクションフレーム

1994SB6

ストレートコネクションフレーム

SUZUKI製1,074cc水冷並列4気筒エンジンを搭載したSB6には、独自のストレートコネクションフレームが採用されました。ステアリングヘッドからスイングアームピボットへと向かう荷重伝達の経路を重視し、直線的な構成のアルミニウム合金製ツインスパーフレームを設計。高出力エンジンを支えるための剛性と、車体全体のコンパクト化を追求しました。ステアリングヘッドとスイングアームピボットは、旋回時や加減速時に車体へ加わる力を受け止める重要な部分です。その両者を結ぶフレームの形状と剛性は、操縦安定性を左右する基本要素となります。SB6では、これらの構造を独自の視点から最適化。bimotaの歴史において最多の販売実績を残すモデルとなり、1990年代を代表する存在となりました。

500 Vdue 自社開発による2ストロークエンジン

1997500 Vdue

自社開発による2ストロークエンジン

それまで他メーカー製エンジンと独自の車体を組み合わせてきたbimotaが、初めて自社設計のエンジン開発に踏み出した500 Vdue。新開発の499cc水冷2ストロークV型2気筒エンジンには、電子制御式の燃料直接噴射システムを採用。2ストロークエンジンが持つ高い出力性能を維持しながら、燃料消費と排出ガスの低減を目指す、極めて野心的な開発でした。しかし、量産化の過程で燃料噴射システムの不具合やエンジンの製造上の問題が表面化。納車された車輌はリコールの対象となり、後にキャブレター仕様への変更も試みられました。開発と販売に伴う損失は経営を圧迫し、bimotaが深刻な財政危機に陥る一因となりました。革新的な構想と、それを量産製品として成立させることの難しさ。500 Vdueは、技術への飽くなき探究心と、その挑戦に伴う厳しい現実の双方を物語る、bimotaの歴史における重要なモデルです。

SB8 アルミとCFRPのハイブリッドフレーム

1997SB8

アルミとCFRPのハイブリッドフレーム

SUZUKI製V型2気筒エンジンを搭載するSB8シリーズでは、アルミニウム合金と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を組み合わせた、独創的な車体構造が開発されました。アルミニウム合金製ツインスパーフレームに対し、スイングアームピボット周辺へCFRP製部材を組み合わせる構造です。異なる素材を適材適所に配置することで、車体に求められる剛性と重量の最適化を追求しました。CFRPは炭素繊維の方向や積層構成によって、強度と剛性の特性を設計できる素材です。その特性を車体の重要な支持部に活用したことは、従来の金属製フレームとは異なる設計の可能性を示しました。この技術を受け継いだSB8Kは、2000年のスーパーバイク世界選手権フィリップアイランド大会で優勝。異素材を組み合わせたbimota独自のフレーム技術は、世界選手権の舞台でも実績を残しました。

TESI H2 TESI H2のためのハブセンターステアリング

2019TESI H2

TESI H2のためのハブセンターステアリング

KAWASAKIとの協業によって誕生したTESI H2では、長年にわたって進化を続けてきたハブセンターステアリングが、スーパーチャージド エンジンに対応する新たな構造へと発展しました。搭載されるのは、過給時に最大178kW(242PS)を発揮する998cc水冷並列4気筒エンジン。この強大な出力に対応するため、車体を構成する各部材の強度と剛性を重視した専用設計が採用されました。前後スイングアームをはじめとする主要構造部には、アルミニウム素材から精密に削り出した部品を使用。さらにスイングアームの結合部分には炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し、航空宇宙分野で用いられる接着技術を応用することで、異素材を組み合わせた構造を実現しました。1980年代に始まったTESIの研究は、KAWASAKIの過給技術との融合によって、新たな段階へと進化しました。

KB4 シート下に配置されたラジエーター

2020KB4

シート下に配置されたラジエーター

KAWASAKI製1,043cc水冷並列4気筒エンジンを搭載するKB4では、ラジエーターをシート下に配置する独創的な車体レイアウトが採用されました。一般的な水冷モーターサイクルでは、走行風を受けやすいエンジン前方にラジエーターを配置します。しかし、この構造では、ラジエーターを収めるための空間が前輪とエンジンの配置に影響します。KB4ではラジエーターを車体後方へ移すことで、前輪をエンジンに近づけるレイアウトを実現。ホイールベースの短縮と、前後重量配分の最適化を追求しました。シート下に配置されたラジエーターは、専用の冷却経路と組み合わせて機能します。大排気量エンジンを搭載しながら、コンパクトな車体と軽快な操縦性を追求する。ピエルルイジ・マルコーニが手掛けたこの設計は、車体全体の構成から運動性能を考えるbimotaの伝統を受け継いでいます。

TESI H2 TERA 新しいTESIシステム「TERA」

2024TESI H2 TERA

新しいTESIシステム「TERA」

ハブセンターステアリングの可能性を、スポーツ走行からクロスオーバーという新たな領域へ広げたTESI H2 TERA。その中核となるのが、bimotaが特許を取得した新世代のステアリング機構「TERA」です。従来のTESIシステムを基礎としながら、ハンドルバーから前輪へ操舵入力を伝えるリンク機構を再設計。構成部品の点数を大幅に削減し、機構の簡素化と信頼性の向上を図りました。また、左右それぞれ35度という大きなステアリング切れ角を確保。従来のTESIシリーズとは異なる、低速走行時の扱いやすさや日常的な取り回しを重視した設計です。前輪の支持と操舵を独立した機構で担うという基本思想を維持しながら、実用性をさらに高める。TERAは、長年の研究から生まれた独創的なステアリング技術を、新たな用途へと発展させたシステムです。

KB998 Rimini ライダーに応じて剛性を調整するフレーム

2025KB998 Rimini

ライダーに応じて剛性を調整するフレーム

スーパーバイク世界選手権への参戦を目的として開発されたKB998 Riminiには、bimotaが長年培ってきた異素材複合フレームの思想が受け継がれています。主構造にはクロムモリブデン鋼製のトレリスフレームを採用し、アルミニウム合金削り出しのピボットプレートと組み合わせることで、車体に求められる剛性と構造上の自由度を追求しました。大きな特徴は、ライダーの好みや走行条件に応じてフレームの剛性特性を調整できる設計です。高性能なレーシングマシンにおいて、フレームの剛性は高ければよいというものではなく、旋回時の接地感や荷重の伝わり方との調和が重要になります。さらに、ステアリングヘッド部には少量生産に適したマイクロ鋳造技術を採用。外装やサブフレームにはオートクレーブ成形によるドライカーボンを使用し、各部の素材と製造方法を用途に応じて選択しています。1982年のHB2で示された異素材複合フレームの思想は、半世紀近い年月を経て、現代の世界選手権を戦うレーシングマシンへと受け継がれました。

KB998 Rimini 可変ウイングレット

2025KB998 Rimini

可変ウイングレット

KB998 Riminiには、走行状況に応じて翼の角度を変化させる可変ウイングレットが採用されています。一般的な固定式ウイングレットとは異なり、加速やブレーキングなどの走行状態に合わせて角度を自動的に変化させることで、必要な空力特性を得ることを目指した機構です。モーターサイクルのウイングレットは、走行風によって車体に下向きの力、ダウンフォースを発生させ、前輪の接地荷重や車体姿勢に影響を与えます。一方、発生する空気抵抗や車体の運動特性との関係も考慮する必要があります。KB998 Riminiの可変ウイングレットは、ブレーキング、コーナー進入、旋回、加速という異なる走行局面に対応し、空力性能の最適化を追求しています。ピエルルイジ・マルコーニ率いる開発チームによって生み出されたこの機構は、bimotaおよびKAWASAKIの調査によれば、2025年3月時点で量産モーターサイクルとして世界初の採用とされています。フレーム、サスペンション、操舵機構に続き、空気の流れまでを車体設計の重要な要素として捉える。可変ウイングレットは、bimotaの技術的探究が新たな領域へ広がったことを示しています。

Authorized Dealer

bimotaを、その目で。

ご購入のご相談から、展示車輌のご案内、納期のご確認、整備のご予約まで。bimota正規取扱店 MOTO CORSEが承ります。